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行ってきました、九平次の蔵へ!

行ってきました、九平次の蔵へ!

今年、「醸し人九平次(かもしびとくへいじ)」(萬乗酒造)が約7年ぶりの生酒をリリースするという案内が届き、これは面白いことになっているんじゃないかと、とどろき酒店スタッフ一同で蔵元へ訪ねてきました。

愛知県は名古屋市大高町。都心部から電車で5駅ほどの大高駅へ到着。萬乗酒造は駅から徒歩10分ほどの距離。途中住宅街を通り、小さな橋を渡るとだんだん見えてくる煙突屋根。昔ながらの黒塗りの建物が酒蔵独特の雰囲気を漂わせます。一方で酒蔵の横に無数の冷蔵コンテナ。なんだろうと思いながら門をくぐると、エネルギッシュな挨拶と共に十四代目「久野 九平次(くの くへいじ)」氏が登場! あまりの熱に一同面喰いタジタジ。その流れのまま、なされるがままに蔵内へ案内していただきました。

一緒に案内していただいたのは九平次氏の右腕と称される中川さん。日本酒造りの行程を順序良く案内して頂きました。まずは洗米場、メトロノームを使いながらサッサッサッと一定のリズムで洗米していきます。驚いたのは、最新の洗米機は使わず竹網のザルで手作業で洗っていたこと! 勝手なイメージから最新設備で造られるだと思っていましたが、いやいや特別な装置は殆ど無く丁寧に手作業にこだわり醸されていました。「洗米機や鉄アミよりも、竹網ザルの方が保湿しながら洗えるし、柔軟性もあるからお米が割れにくいんです」と中川さん。

次に蒸し場へ、蒸し上げる四角いコシキも檜造り。保温保湿に加え、水分に強い木の特性が丈夫で長持ちなんだとか。先人の知恵は現代も活かされています。

麹室は2階に。
ここで再び熱の入った九平次さんのトーク、発酵で左右される2種類の酵素はこの麹室で決まるとの事。いかにここで理想の麹を育て上げるかが一番大事。造り中は泊まり込んで常に麹の温度や湿度などを管理しています。

次は貯蔵室へ。
移動の途中でふっと、「あれ、今造りの真っ只中だよね?・・・なんかめちゃめちゃ蔵の中綺麗なんですけど・・」
蔵内を見渡すと、お米一つ落ちてない清潔さ。使っている機材や器具などもすごく綺麗に洗われて整理整頓されてました。色々な蔵元を訪ねる事がありましたが、造り中の蔵でこんなに綺麗に整理整頓されている蔵は初めてで、驚き以上に衝撃を受けました。

貯蔵室へ着くとほのかにフルーティな良い香りがふんわり。発酵途中の日本酒がせっせと芳しい吟醸香を生み出しています。各タンクごとに発酵段階のフレーバーを説明して頂きました。発酵最初の香りは、まだ弱い香りとプクプク泡立つもろみ。中盤になると華やかな香りと、揮発性のガスを感じます。終盤になると吟醸香がまとまりをみせ、爽やかな果実味を感じさせます。醸し人九平次の特徴は、ここから氷点冷蔵庫でゆっくりと寝かせ、開封した時にもっともフレッシュでジューシーな味わいが楽しめるタイミングで出荷されるということ。そういえば、酒蔵の横に冷蔵コンテナがありましたが、あの中ですくすく育てられていたのか。

一通りの蔵内を案内して頂き、ここからが九平次蔵の本題。
田んぼ・酒米造りの講義が始まります。

<醸し人=耕す人>
お酒造りでもっとも大事なこと、それはお米を作ること。その為には田を耕し農家になる事だと九平次氏は語ります。そして萬乗酒造独特の取り組みとして、2010年から蔵人2名が兵庫県の黒田庄門柳に移り住み、山田錦を地元農家さんの協力のもと自家栽培しています。そうして生まれたお酒が「黒田庄に生まれて。」でした。2014年には農業法人を立ち上げて、現場責任担当の金子氏を筆頭に黒田庄へ新しい蔵を立ち上げるプロジェクトが進んでいました。

金子さん曰く「黒田庄の中でも、特に質の良いお米が出来るエリアがあるんです。そこのお米はめちゃめちゃエロいお米なんですよ」。常に田んぼに出向き、お米の一つ一つを管理するからこその言葉。話を聞いていくうちに、自然派ワインの思想とすごくリンクしていき、結局のところ日本酒もワインも田んぼや畑から生まれてきて、ワインの世界では当たり前のように認識されている畑から醸造までの過程が日本酒の世界ではまだまだ発展途上なのだと痛感しました。来期2019~2020年の造りからは、兵庫県黒田庄の新蔵が始動します。名古屋と兵庫の二つの蔵がこれからの日本酒業界を騒がしそうです。