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行ってきました⑪ クロッスリー・デ・ムーシス

メドックをキャッキャとはしゃいで楽しんだ夜に飲んだワインがこちら。
ボルドーらしからぬ(濃さ、重たさという面で)なんて柔らかいボルドーワイン!とどろき勢が好きな味。

アテンドしてくださった方がこのワイナリー興味あるんだよねー、と。
これまでの怒涛のスケジュールとは打って変わってちょうど次の日は朝からフリー。
明日朝イチ、アポ取ってみる!アポ取れたよ!ということで急遽訪問が決まりました。

ローレンスさんとパスカルさん、友達どうしの女性2人が2009年に立ち上げた、クロッスリー・デ・ムーシス。
ワイナリーがあるメドック地区は大型資本のワイナリーが乱立し、システマティックなワイン造りが多い地区です。そんななかカントナック村とセネジャック村の合わせて1haの畑でブドウを栽培しワインを造る小さな生産者。

カベルネソーヴィニヨンを主に、平均樹齢30年の区画とパルメの付近のフィロキセラから免れた平均樹齢150年(!)というカベルネソーヴィニヨン、カベルネフラン、メルロー、プティヴェルド、カルメネールの混植の畑。ビオディナミによる栽培で剪定、芽かき、葉の摘み取り、収穫など、全ての作業が手作業。

収穫後のブドウも、一粒一粒つぶさないように丁寧に除梗。タンクにブドウ入れ、セミマセラシオンカルボニックにてアルコール発酵(密閉し、タンクの下のほうで潰れたブドウがアルコール発酵して出てきたCO2がタンク内を満たします)。ピジャージュ(タンクの中を混ぜる作業)は週に1回くらい。酸化防止剤も使わない。そのためワインの味わいは、メドックのボルドーワインの印象を覆すほど、ピュアで繊細で滑らか~。しかしその奥にはメドックのニュアンスもきちんとあります。
自社ブドウで造るワインはボトルで650本ほど。買いブドウを合わせての生産は12000本ほど。
本当に小さな生産者ですが、クラシックでもあり前衛的な不思議な魅力にあふれています!

マルゴーから車で10数分。こんな、茂った野道というか山ではないけど山道のようなところに入ります。
ほんとに道が合っているのか不安にかられながらも…

無事にたどり着き、迎えてくれたのはローレンスさん。(この日はパスカルさん不在)

小柄な女性ではにかむ笑顔がかわいらしい、でも芯の強そうな…きらきらと光る瞳が印象的。
南西地方のご出身で、アルザスやロワールのワインを飲んだのきっかけでビオディナミに興味を持つようになったそうです。
「もともとカベルネソーヴィニヨンのワインが好きだったけど、そんなに濃いものを飲んでいたわけじゃない。1950~1970年代のカベルネが好き。1980年代から濃い味わいになっていって…。キュッとした酸を出すのが目標。」という話を聞いた後に試飲をさせてもらいましたが、ローレンスさんが好きな味わいを造られているんだな、とつくづく実感しました。酸がありつつ厚み、ボルドーらしさもあるけどなんせ柔らかい。

自分用にボルドーワインを買うことはまずなかったのですが、ここで1本即購入。割れないように大事に持って帰らないと!

試飲しながら、ボルドーの生産者が醸造面でテクニカルに仕上げるところが多いのは、バカンスをしっかり取る人たちが多いから、というような裏話?もしてくれました。バカンス中、ワインを放っておいてもいいように酸化防止剤を大量に入れる。自分たちが酸化防止剤無添加のワインを造っていると言うと、ものすごくびっくりされるそうです。

その後、ワイナリーからほど近い平均樹齢30年の区画の畑に連れて行ってもらいました。

畑が汚れていない証拠(プラドのベルナールおいちゃんやル・ピュイのマダムにも教わった)であるコクリコの花や野生のネギが生えてます。自生のカモミーユがたくさん。でもカモミーユは砂地だから多いだけだと教えてくれました。土がきれいだからかと思いましたが違ったのね…。

この砂地の80㎝下は粘土になっているそうです。

ブドウも結実。

ボルドー全体でビオディナミを実践しているのは7%。今回、生産者の方の話を聞いたりボルドー市内のお店を回っていて、ボルドーにもナチュール志向な感じがきてるな、と感じていたのですが数字で見るとこんなもんなんですね。これから先どんどん増えると嬉しいです、ナチュール好きとしては。
実際こういう目線でボルドーに注目している生産者や飲み手はじわじわ増えているようです。

クロッスリー・デ・ムーシスはまだ設立10年ほど。
ボルドーでナチュールに取り組む若手生産者として大注目です。