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Sachiko Tejima

Mika Tanaka

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Kano Nakashima

ワインと料理のはなし – 1

軽やかなきんぴら、果実味ぎゅっ アルザスの白 前編

September 21, 2019
From: 手島幸子
To: 田中美佳
Subject: そろそろ秋のワインを

美佳ちゃん

こんにちは。
お彼岸を過ぎると、ようやく秋の風を感じるようになるね。
9月に入ってしばらくは、夏の名残りですっきりしたワインを楽しんでいたけど、
そろそろ、実りの秋を楽しむワインが飲みたくなってきました。

テジ家は、食事のスタートに季節を感じる野菜を楽しむ機会が多いから、
秋を感じると、根菜類の滋味深い味が恋しくなって、
テジ家定番の「ごぼうとにんじんのきんぴら」を作る機会が増えます。
なーんだ、毎日のごはんに合う惣菜だって思いがちだけど、
これは酒の肴になるきんぴらなの。

ごぼうとにんじんを極細の千切りにして、炒める時に少量の出汁を加えることで、
根菜の旨みを生かした、甘さ控えめで上品な仕上がりに。
味のベースは、お酒とみりんと薄口醤油。
細いから短時間でさっと火が通って、シャキシャキした食感もご馳走なの。
シンプルな味にしておくと、食べる時にいろいろアレンジできる楽しみがあって、
毎日食べても飽きない「きんぴらラブ」なこの頃。

ということで、今日は美佳ちゃんにメールさせて頂きました。
秋の食卓に、とりあえずの一品に合うワインがあると嬉しいな。
何かおすすめワインがあったら、紹介お願いしまーす。

そうそう、9月は夜空を見上げることが多くなるよね。
月の光で夜空が明るいんだよね。
先週末は、月が見えようが見えまいが、
昼からお月見の気分を盛り上げるためにお月見ランチ(笑)。
セージと椎茸のフリットにワインを合わせて!
今年は、テジ旦那が育てているベランダのセージがすごーく元気で、
フリットにすると、香りだけでなく、
セージの葉がモチモチした感じでなんともおいしいの。新食感!
八百屋さんに行ったら、小ぶりだけど、ぷっくり肉厚な椎茸に出会ったので、
これもいっしょにフリットして、塩をパラリ。
それに大好きなかぼすを添えて、
グリーンのお気に入りのお皿に盛りつけたら「秋が来た〜!!」
あれっ、セージのフリットがススキに、かぼすが月に見えて、
なんちゃって「お月見プレート」に。

相変わらず、何かと理由をつけてはワイン片手に楽しむ日々です。
ところで、美佳ちゃん家のきんぴらってどんな感じ?
お時間ある時に、教えてね。
ではではー。

テジマサチコ

September 22, 2019
From: 田中美佳
To: 手島幸子
Subject: じみな季節

幸子さん

こんばんは。
お昼からお月見プレートだなんて、
どんな季節でもテジ家の食卓は楽しそうだなあ。

干物を焼く時にセージをいっしょに入れるとおいしいと
幸子さんから教えてもらったことをまだ実践できていないのですが、
フリットもいいのですね。
“もちもち”と“香り”を食べるフリット。おいしそうです。
それにしてもベランダのセージ、ぷりっぷり。
テジ旦那さまはみどりの指をお持ちなんですね。
私は悲しいかな、なかなか植物を上手に育てられないたちなのでうらやましいです。

さてさて、しいたけ、根菜、きんぴら、秋になりましたね。
「滋味」という言葉って、見るだけでおいしそう。
涼しくなってくると、地味で滋味なじんわりくるワイン、いいですよね〜。

9月の頭に行った、妹ファミリーの住む宮崎えびのの道の駅にも、
立派なごぼうや舞茸、平茸などのきのこ類がわさわさと並んでいました。
余談ですが、そこでの一番の収穫は生落花生。嘉麻の地物では見たことない食材です。
塩茹でして食べると、ほくほくおいしくて止まりませんね。
帰る日には何袋も買って、のんべえ仲間のお土産にしました。

話は戻って、きんぴらといえば、
一時期、れんこんのきんぴらにはまって作っていましたが、
ごぼうのきんぴらは母まかせ。
ほぼ斜め切り?という太めのささがき?いや斜め切り?で、
甘辛くて、やっぱりごはんのおかずのイメージです。
そういえば、お弁当のおかずによく入っています。というくらいの印象。
私ときんぴらはラブとは(まだ)言えない関係ですね。
しかし、ワインに合う極細のきんぴら、
シャキシャキなきんぴらのことが気になってきました。

まっすぐに考えると白なのかなと思うのですが、
ちょっと土っぽい赤、出汁っぽい赤なんかもよさそうな。
白だとちょっと甘みのあるものはどうだろう。
なんだかいろいろ試し甲斐がありそうなお題ですね(にんまり)。

えびの道の駅での収穫の一部。おかひじきを初めて食べました。
きくらげはもちろん、黒酢炒めといっしょに。

美佳

September 28, 2019
From: 田中美佳
To: 手島幸子
Subject: ふーむ、違うなあ。

幸子さん

こんばんは。
今日は母にきんぴらをリクエストして、
気になっていたワイン2本と合わせてみました
(何も言っていないのに、今日のきんぴらはなぜか細めに切ってありました)。

ボス推しの白と、私が合わせてみたかった赤。

白は、今とてもおいしい(飲み頃の)、ピエール・フリックのピノブラン(アルザス)。
白桃やパインのような果実味がぎゅっと凝縮されていて、
きんぴらのオイルや甘味と相性がよさそうだなと思っていたのですが、あれれれ?
果実味にきんぴらが負けちゃいます。
うちのきんぴらは米油なので、
オイルが違ったりするとまた相性が変わってくる気もします。

そして赤は、日本・長野のメルロ&カベルネ・ソーヴィニヨン。
あら、これも違うかも。
ごぼうの土っぽさと、このワインのじんわりクラシックな落ち着いた感じが合うのではと想像していたのですが、
樽の風味と合わないようです。
もともとほどよい樽のニュアンスと落ち着いた果実感が溶け合ったところが魅力的なワイン(しかも2000円くらい!)なのですが、
今回の組み合わせではごぼうの地味さに対して、樽が派手に感じてしまいました。

実は、きんぴらというお題を聞いてまず思い浮かんだのは、
ボスも私も、イタリア・フリウリの造り手レヌッツァのリボッラジャッラというブドウを使ったワイン。
そう、春のやりとりで登場した白ワイン(このときはソーヴィニヨン・ブランでしたね)の造り手の、ブドウ違いです。
派手さはない、地味なタイプなのですが、料理と合わせるとくいくいといけて、
いつのまにかグラスが空になっているタイプ。
オイルとも相性がいいんです。

せっかくなので違う造り手も知ってもらえたらと
次の一手を考えて出てきたのが、この2本だったのですが。
ふーむ。
やっぱり実際に合わせてみないとわからないものですね。

ちなみに、どちらもワイン自体はとてもおいしいのですよ。
しかし、調味料やオイルの使い方でも、きっと合い方って変わりますよね。
ちなみに幸子さんのきんぴらは、どんなオイルを使われているのでしょうか?

いつもは唐辛子の輪切りが辛みとして入っているのですが、今日はなかったらしく一味唐辛子で代用したそう。
母曰く、ふりすぎたそうで、辛いです。

美佳

September 28, 2019
From: 手島幸子
To: 田中美佳
Subject: きんぴらの味、深し!

美佳ちゃん

こんばんは。
今、きんぴらについてメールを書き始めたら、
美佳ちゃんからメールが! 以心伝心だわー。

早速、ワインを検討して頂いて有難うございます。
私が何となくイメージしていたのは白だったのですが、
根菜類の土っぽさと赤が繋がるんだね。
テジ家のきんぴらはかなり薄味で、
野菜の旨みと甘みを引き出す感じなの。
出汁をベースに入れるので、
より軽やかな味なんだよね。どっちかって言うとサラダ感覚!?
極細の千切りなので、サッと火を通します。

ワインやお酒に合わせるには、
野菜の旨みをメインにしたほうがより楽しめる感じがして、
いつの間にか、この味つけが定番に。
お醤油と甘味が主役になってると、ワインとの相性も違ってくるよね。
きんぴらのお味! 深いなー。

オイルはね、その時の気分で。ワインを意識する時は、オリーブオイルで炒めることも。
普段は、癖のない太白ごま油が多いかな。
ちょっとパンチを持たせたい時は、仕上げに、ごま油を振り入れたり。
あとね、薄味のきんぴらなので、オイルだけでなく、
お皿に盛りつけてからもいろいろフレーバーを楽しめるの。
食べはじめて、ちょっとこのワインに合わないなって思ったら、
今の季節なら、酢橘やかぼすの果汁をギュッと絞ったり、
食べる時に、香りづけにごま油、オリーブオイルをかけることも。
辛みもつけずに作ることが多くて、七味や山椒、すりごまをパラリとかけたり。

すでにしっかり辛いきんぴらなら、ちょっと柑橘の搾り汁をかけるといいかも。
せっかく選んでもらったワインたち、
きんぴらフレーバー!!で、再トライしてみたらいかがでしょう?

ちなみに、私の新潟の実家の母のきんぴらは、
マッチ棒サイズに切ったごぼうとにんじんを
しっかり醤油と砂糖を入れて炒めて、白ごまを一振りし、唐辛子をピリッと効かせた味。
これはこれで大好きな味なんだけどね。やっぱり白いご飯が恋しくなる。

ではでは、引き続き、テジ家のきんぴらに合うワイン!
よろしくー。

テジマサチコ

次回は11月8日(金曜日)アップ予定です!