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Sachiko Tejima

Mika Tanaka

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Kano Nakashima

ワインと料理のはなし – 2

カリーム・ヴィオネ、コクの黒酢とナチュラルな甘み

April 04, 2019
From: 手島幸子
To: 田中美佳
Subject: 黒酢バチバチ!!
春色の野菜たちを冷水につけて養生してから料理をスタート。

美佳ちゃん

さて、先週末にあけたワインたちは、しばし間をおいて、
抜栓から5日が経ちました。
香りや味が変化しているかなって、ちょっとドキドキしながらグラスへ。
白ワインのフリウリの「レヌッツァ」に嬉しい変化が!
果実味が深くなり、まろやかな味わいになっていました。
もしかして、今夜が一番いい状態なのかも。
テジ旦那といっしょに飲めるタイミングが合わなかったおかげで、
嬉しい展開に、自然派ワインの底力を感じます。

今夜は和食からスタート。
テジ家の食事は、季節の野菜の和えもの(マリネ)やお浸しから始まることが多いです。
旬の野菜の瑞々しさをお酒と合わせて、そこから料理を展開していくの。
五感のウォーミングアップ的な感じかな!?

今日は、「アスパラ菜とそら豆のお浸し」と「ウドのきんぴら」。
煮干しと昆布の水出汁を汁ごと飲める程度の味にして、
ゆで野菜を浸します。
これはお教室でも定番の料理。
アスパラ菜は、甘みがある菜花、そら豆と合わせて。
春色の野菜と出汁の味が、
白ワインのフリウリの「レヌッツァ」に合います。

春の山菜で大好物のウドは、アクが強い山菜だけど、
オリーブオイルで炒めると、パンチのあるもの同士が仲良くなって、
アクが旨みに変化。
仕上げに米酢をひとふりして、甘酸っぱい仕上がりにすると、
ウドがロゼ色に変色して艶っぽくなるの。
一袋買ってきても、テジ旦那と二人でぺろっと食べちゃうほど好き。
先日から語っている通り、
甘酸っぱさとレヌッツァの組み合わせは、間違いないみたいだね。
ふきのとう、たらの芽など春のほろ苦い山菜にも合いそう。

自然派のワインは和食に合うことが多いよね。
出汁の味とも違和感ない場合が多くて、お醤油とも相性がいいし。
私は、野菜料理のときは特に、野菜の色はもちろん、
味の輪郭をクリアーに出したいので、
あえて薄口醤油を使うことが多いの。
すっきりした味つけって言うのかな。
だけど、九州のお醤油って甘めだから、ちょっと味つけが違うのかな?
同じ醤油を使う料理でも、
もしかしたら美佳ちゃんと私では味の違いがあったりして!!
どんなお醤油を使っているのか、今度教えてね。

さて、本題に戻って、この辺りで白から赤へ。
赤ワインのボージョレ―の「カリーム・ヴィオネ(KV)」は、
味は全然落ちていなくて、
よりフルーティになってる。
前回飲みながら黒酢と合いそうだなと思ったので、
今夜の〆は「豚肉とアスパラガスの黒酢炒め」を。

予想通り、KVと黒酢はバチバチに合いますよ!
ボジョレーの果実味と合わせるために、
いつもの味に少しメープルシロップで甘みをプラスして、
どちらかと言うと、黒酢酢豚っていう仕上がりに。
最後に黒こしょうの粗びきをしっかり挽いて。
元気で陽気なKVのワインに、チャイニーズの料理はよく合いますね。
はい、今夜も食欲のテジ家。黒酢炒めに合わせて〆ご飯コース。
ついつい、食べすぎました。反省。

テジマサチコ

April 05, 2019
From: 田中美佳
To: 手島幸子
Subject: 山。山羊。作ってみました!
上:道の駅のひとつ(正確には卵農家さんの店)から見える山なみ。馬見山(うまみやま)、屏山(へいさん)、古処山(こしょさん)で嘉麻の三山と呼ばれます。
中:買いもの途中で出会う山羊のおんじは、日によって、いたりいなかったりの謎の存在。車道のすぐそばの土手に放たれていて、気持ちよさそうに草を食んでいます。写真ではわかりづらいですが、なかなかの巨体です。
下:ミニトマトと金柑の大きさがそろっているのも愛らしく。

幸子さん

アスパラ菜!
えびのの道の駅にあって、買おうかと迷ったのですが、
結局、茎ブロッコリーを買ったのでした。
やっぱり買っておくべきだったー。

なので今日は、
オレンジとプチトマトのマリネと、
豚肉の黒酢炒めを作ろうと、道の駅に買い出しに行きました。

野菜の買い出しは、いつもの隣町の道の駅の、3か所巡り。
3店それぞれに得意分野があるので、時間と体力がゆるせば3店巡ります。
そして豚肉は、都会側の隣町の肉屋さんで。

料理は、結果、おいしくできたと思います!

ネーブルオレンジは地元ではとれないので、代わりに、
えびので買ってきた金柑で作ってみました。
金柑の皮とレヌッツァの苦味も、やっぱりよく合いますね~。
柑橘とレヌッツァの相性のいいことはわかっていつつ、
この相性は毎回喜びがあります。

そして、豚肉の黒酢炒めに合わせるべく、KVも抜栓!
開けたては、果実味がフレッシュで、また、酸がするどく感じます。
KVは、軽やかで飲みやすい一方で、
カカオや黒こしょうのようなスパイシーさもある、というニクいやつなので、
豚肉の脂や黒酢などのコクとも合いますね~。
開けたてもいいですが、時間が経つと酸がなじんできて、
もっと落ち着いた相性になっていきそうな予感です。

幸子さんの言う通り、甘みにメープルシロップを入れてみると、
おー、こりゃいい。自然な甘みとコクが増して、いい感じ!
幸子さんがいつもより甘めに作ったというのが、腑に落ちました。
レヌッツァは油を切る感じで、鼻腔に香りや味が跳ねますが、
KVは、料理と合わさり、口の中で少したゆたっておいしさができるイメージです。

それにしても、「アスパラ菜とそら豆のお浸し」の、
つやっつやのぷりっぷりの美しい緑色のグラデーション。
幸子さんの手にかかると、もう一度、野菜が生き返る感じがします。

こういうお浸しにも、幸子さんは薄口醤油を使われるんですね。
私は、愛媛の「巽(たつみ)醤油」を使っています。
おっしゃる通り、母の使う九州の醤油は甘いので
ワインにはあまり合わないような気がして、
家では私だけ違う醤油を使っています。

生まれ育った土地の違い、家庭での味の違いもありながら、
人や食べもの、お酒との出会いで形成されていく
嗜好の違いも出てきますね。

美佳

April 07, 2019
From: 手島幸子
To: 田中美佳
Subject: Re: 山。山羊。作ってみました!

美佳ちゃん

九州の春を感じるお返事ありがとうございます。
美佳ちゃんの日常の写真、癒されますー。
放牧の山羊!? 緑や山並みもいいですね。
そして、道の駅も大好き!

それに、美佳ちゃんからの「野菜を生き返らせる」っていうコメント、嬉しい。
シンプルな料理ほど、素材を見極めベストな状態に整えて、
料理することが大事だったりするよね。
野菜のお浸しや和えものは、
味つけの前の、野菜を茹でるところがポイントだったり。

確かに、九州の醤油は、
テジめし愛用の薄口醤油に比べると、
別モノの調味料と言ってもいいかもしれないね。
「豚肉の黒酢炒め」で
メープルシロップの甘さをプラスしたけど、
九州の醤油ならお醤油だけで味が決まるかも。

私がメープルシロップを愛用するのは、
自然派のワインには、上品な甘さで、
程よいコクのあるメープルシロップが相性がいいから。
和食に使っても違和感ないし。
料理をするうえでも、溶ける時間を考慮しなくていいので、
最後の味見でもうひと味っていう時に、
甘さを調整するのに便利。
さらに、嫌味がないすっきりした甘さなので、
後で入れてもしつこくないの。
最初はハードルが高い感じがするかもしれないけど、
砂糖に代わる調味料だと思うと使いやすいので、
ぜひ、使ってみて。

それにしても、4月に入ってからの浅草は、
お花見、春休みと重なって、とにかくすごい人でした。
テジ家は、浅草寺から歩いて10分ほどで、
家の近くは静かなのですが、
買い物や駅に行く時は、境内や仲見世を通るので、
毎日がお祭りのような町に住んでいる感じです。

この桜の季節を終えると、浅草は三社祭の準備に突入。
今年は、三社祭のお手伝いの当番に当たっているので、
近々、町会の祭礼委員会の集まりがあるの。ドキドキ。

さてさて、美佳ちゃんから送ってもらった白赤のワインも、
残すところグラス一杯ずつに!
(1週間近くかけて飲むなんて、テジ家、がんばりました! 笑)
ラストの今夜は、軽やかな野菜たちを満喫する、
「春を包む」がテーマの料理たちと合わせます。

テジマサチコ

  • レヌッツァ

    白ワイン

    正式名は「レヌッツァ ソーヴィニヨン 2017」
    1900年頃から農業・家畜業で生計を立てていたレヌッツァ家は、1954年より本格的にワイナリーとして歩みを始めた。1990年頃より自然環境を重んじた農法へと移行を始める。現在は7haの畑より約40,000本をボトル詰め。畑では自然との調和・バランスを最も大切にしており、あらゆる植物や生物が暮らす自然環境をそのまま残しつつ、ブドウ栽培を行う。淡い麦わらの色調。レモングラスやスパイス、オイリーなニュアンスも感じます。口に含むと爽やかな果実味が広がります。(ソーヴィニヨン)

    イタリア / フリウリ・ヴェネツィア・ジューリア

  • カリーム・ヴィオネ(KV)

    赤ワイン

    正式名は「カリーム・ヴィオネ ボージョレー・ヴィラージュ キュヴェ “ KV カー・ヴェー ” 2017」
    1990年、ジャンポールテヴネの兄のドメーヌで16年間働き、2000年にボジョレーの醸造学校に通いつつ、マルセルラピエールやジャンポールテヴネ、ギィブルトンで自然派を学ぶ。2002年からギイブルトンのドメーヌの畑と醸造責任者を兼務しつつ、2006年自らのドメーヌを新しく立ち上げる。カリームのフレンドリーな人柄、ブドウをほうばった時のようなピュアで果実味溢れるワイン、そして本人をモデルにした好インパクトなラベル(ミッシェル・トルメー氏によるデザイン)。「人・ワイン・ラベル」のイメージが見事に一体となっています。(ガメイ)

    フランス / ボージョレー