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Sachiko Tejima

Mika Tanaka

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Kano Nakashima

日本酒を好きになり、
飲んで飲まれているうちに
酒屋で働くようになって早9年。
気がついたら、日本酒と同じくらい、
いやそれ以上にワインを飲んでいる。
ワインはむずかしそうだと思っていたのに、
それまで「自然派」や「ナチュール」なんて言葉さえ知らなかったのに、
気づけば日常的にワインを飲んでいる。

最初は、仕事だからと飲みはじめた
自然派やナチュールと呼ばれるワインや日本のワインは、
毎日のなんでもない食事に驚くほどすんなりと馴染んだ。
脚付きのグラスよりも、コップで飲むほうが似合うものもある。
一粒の果実そのもののように、
するすると体に染み入って、
また明日も飲みたいと思う。
気づけば、食卓にワインのボトルが登場する頻度が増えていった。
困ったものである。

合わせる料理が、特にがんばったものではなくてもいい、
っていうのも私には具合がいい。
おいしい豆腐に塩と好きなオイルをかけるだけ。
旬の葉もの野菜のオイル蒸しにスパイスを加えるだけ。
新鮮な刺身を薬味とオイルで和えるだけ。
仕事の後で疲れていてもできるような、
一見手抜きなような、
よくいえば素材感のある料理がよく似合って、
じゅうぶんおいしい酒のお供になる。
素朴な実家の母ごはんだって、ほぼ違和感なく合ってしまう。

しかし、最近、少し欲が出てきた。

もうちょっと気のきいた料理ができれば、
もっとワインがおいしくなるよな。
がんばりすぎず、むずかしくなく、
何回も繰り返し作りたくなるような、
日常の料理として作れると、なおうれしい。

そんなときに思い浮かんだのは、
東京・浅草に住む幸子さんの顔。
彼女は、「テジめしcooking」という
料理教室の先生でありながら、
日常的にご主人とワインを楽しんでいる。
幸子さんとは、おいしいツボは近い(と私は感じている)。

幸子さんなら、
このワインにどんな料理を合わせるだろう?
どんなふうに楽しむだろう?

こうして、いちワイン飲みの、素朴な疑問から、
浅草の幸子さんと、博多にいる私との間でやりとりがはじまった。

年齢も、住む場所も、食卓の環境も、
使っている醤油や味噌の味も違うふたりが、
同じワインを飲んで、食べて、作って、
ただただ、ワインのある食卓を楽しむ交換日記。
はじまります。