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行ってきました⑩ 格付けシャトー

優雅なランチの後は格付けシャトーが軒並み並ぶ、メドックへ向かいます。
ジロンド川沿いを北上していると、名だたるシャトーの案内標識がいたるところにあり、この場所に今、いるんだ!と思うとそわそわしてしまいました。

格付けシャトーもぜひ見学しよう!と、訪れたのはサンジュリアンに本拠地を構えるメドック2級シャトー、レオヴィル・ポワフェレ。
レオヴィル・ラスカーズ、レオヴィル・バルトンともともとは一つだった畑が分家して出来たシャトー。
ジロンド川岸に近い斜面に畑があり、非常に水はけが良く、メドックでも最も良い土壌と言われています。それだけにポテンシャルは素晴らしいものがあり、80年代には醸造設備を最新化し、セカンドワインの導入、新樽比率を高めるなど、1970年代の不振から立ち直りを果たしたシャトーです。

なんだこれ、です。
そのゴージャスさにびっくり。
めちゃくちゃきれいでびっくり。
いろいろびっくり。

何基あるかわからないくらいに並んでいるステンレスタンク。

すべてを管理。

ずらっと樽、樽、樽…

大きな選果台、というか選果するマシーンですね、そのマシーンは除梗した実を流している間に、未熟果や病果があると風でプップッと排除できるようなものがあったり…。

ル・ピュイとはまた違う衝撃の連続でした。

こんな最新の設備を備えつつ、ビオに転換し始めた畑もちらほら。
話を聞いていると、そういう格付けシャトーも増えているのだそうです。

「今後に注目している生産地は?」とこちらからの質問に、「ボルドー!」と答えたロワールの生産者もいました。
ナチュール業界でジュラがぶわっ!!ときたように、そのうちボルドーもまたそうなってくるかもしれませんねぇ。

レオヴィル・ポワフェレのあとは、せっかくメドックに来たんだからと、5大シャトー(実際にはオー・ブリオンを除く4つ)を遠目からでも見に行こう!ということに。

あれラトゥールじゃない?ロートシルトじゃない?マルゴー行こ行こ!と車の中できゃっきゃ言ってました。




そしてその夜、食事の時に飲んだこのワインが気になって、次の日に突撃訪問することになるのでした。

そしてその後に飲んだ25年熟成のアルマニャックで、私はその世界にも足を突っ込み、自宅のコレクションが増えるのでした…。

たしかこのボトル、マグナムでしたねぇ。

行ってきました⑨ シャトー・ル・ピュイ

プラドを訪れた次の日は、シャトー・ル・ピュイへ。
サンテミリオンの町から北東へ車で20分ほど、コート・ド・フラン地区にあります。

ル・ピュイは400年続くボルドーのビオディナミ・シャトー。生態系が保たれた畑で独自のビオディナミ農法を続けています。敷地は60haくらいでブドウを植えているのはその2/3程度。ブドウ畑を囲んでいる残る敷地は森や沼。その敷地全体の生態系が整っていて数億という数の微生物が…
…という話は前から知っていました。
でも、ボルドーで400年ビオディナミ…?敷地全体が生態系?自分の中で、いわゆる「シャトー」と結び付けることが無意識にできていなかったんだと思います。
それを今回、目の当たりにして納得せざるを得ないというか、ヘェ~、の連続の訪問でした。

デスクランブやプラドとは違う(愛着を感じるからこその言葉です、すみません)、立派な門扉。庭、建物。

出迎えてくれたのは、優雅なマダム。
これまで生産者の方との2ショットを毎回撮ってもらっていましたが、ちょっと、やめました。あまりにも恐れ多くて。お恥ずかしい限りで。

マダムの話はやっぱり、400年続くビオディナミ…から始まりましたが、
当時周りは農薬ブームの中、農薬にお金を使いたくなかったから自然とこうなったの、と続けてくれました。
マダムによると敷地は100haあるそうです。

シャトーのすぐ前には「バルテルミ」の畑。
メルロー主体でカベルネソーヴィニヨン、カルメネールのブレンド、希少な酸化防止剤無添加のキュヴェです。
ブドウ樹の畝と畝の間は、草が茂る畝間と草を刈った畝間を交互に配置してありました。
その時々によって、草の量を調節して「生態系」を保っているとのことでした。

畝間には、土が汚されていない証拠であるコクリコのかわいらしい花。

畝間の草刈りや耕起するのは馬の役目。
この馬のたてがみがまた上品な感じ。

「生態系が保たれているとはどういうことか」。
話を聞く中で私が感じたのは、
人が手を入れる前に、その畑に住む微生物や虫や他の動物が環境を整えてくれているということ。
例えばブドウの実や葉がクモやコガネムシに襲われそうになると、その虫の天敵となる生物がやってきて、自然と退治してくれる。ブドウの樹に悪さをしそうな菌がいると、それを養分とする地中の微生物が喰ってくれる。
なので、殺虫剤などの化学薬品を使う必要がない。
益虫やカビなどの病気がひどいときには敷地内に生えている植物を煎じて撒いたり。

逆に化学薬品を使ってしまうと、害虫どころかテロワールをブドウに蓄える微生物まで殺してしまうことになります。
地中の微生物は、葡萄の根に寄生して樹液の中の糖分を吸い上げます。その後に吐き出される唾液が地中のカルシウムを溶かす事で地中のミネラルが豊かなり、このミネラルこそが、その土地、区画ならではのテロワールを表す要素となるそうです。そして地中のミネラルをブドウ樹が吸い上げてテロワールを樹に、実に蓄え、ゆくゆくはワインとして表現される…。
400年以上もビオにこだわっているのは、テロワールの味わいを表現し続けるため。

ル・ピュイは、テロワールを表現するため、区画ごとに収穫して仕込みます。この方法はボルドーでは珍しいようです。

コンクリート槽。

毎年、区画ごとに使うタンクは決まっています。今あるタンクは100年くらい使っているそうです。
畑で選果しながら収穫して、このタンクに入れて自然と発酵が始まるまで放置。発酵が始まると自然に対流するから、ルモンタージュ(簡単に言うとかき混ぜる作業)もなし。発酵が長引けばもちろん待つ。
いい環境の中でいいブドウができるから、味は整う。せいぜい清潔に保つだけ、基本的に酸化防止剤は使わない、のだそうです。

そして樽の部屋。

見学しているときにちょうど作業されていました。
バトナージュです。
樽の中のワインを棒でかき回して沈殿しているオリの旨みをワインに移すだけではなく、中のプロテインをこわしてなめらかにしているそうです。

1週間に2~3回、2年間続けるのだそうです。

ル・ピュイが造るキュヴェの中には、バルテルミを樽のまま船に乗せて地球1周しながら熟成させる、というキュヴェもあります。
1年かけてその間温度管理は一切せず、航海中に緩やかに温度が上がったり下がったり。そうすることでワインに抗体(環境に強いワイン)ができるのだとか。

敷地内にはこんな神々しい場所もありました。

馬が自由にできる箇所もありました。

その地面にはマメ科の植物がたくさん。ブドウにいいと言われる植物ばかり。
種を蒔いたわけでなく、自然に生えているそうです。それがすごい。

シャトーがある丘からの景色。

ル・ピュイの「ピュイ」は「高いところ」という意味。
ボルドーで1番標高が高いそうです。

訪問後はマダムが予約を取ってくれたレストランで乾杯。

優雅~!

シャトー・ル・ピュイのワイン

<スイーツ>日本酒/独楽蔵 悠五年  “チョコとコシュ”

チョコレートと日本酒を組み合わせるということを意識したのは、まだ酒屋ではなかった20代後半のこと。

その頃福岡県酒造組合との仕事を担当していた私は、味にうるさい(味わうこと自体が人生の)酒造りのプロの方の話を聞くことが日常になっていました(たまたま担当した仕事だったので、今となっては幸運というしかない)。

あるとき杜の蔵の森永一弘さん(現蔵元)が、日本酒の古酒と合わせてカカオ比率たった数パーセントの違いのものをいくつも食べ飲み比べてるんだという話を聞き、へー、そんな細かな違いでそんなに違うものなのか。お酒の世界というのはまったくもの好きな世界だよなあ…と人ごとのように思っていたものでした。

バレンタイン前なので、そんなことを思い出しながら、今となっては基本的にテッパンと思われている古酒とチョコレートの組み合わせを改めて味わってみることに。

独楽蔵 悠 (はるか)五年に合わせてみたのは、
イタリアのチョコAと日本のカカオ成分72%のチョコB。

ちなみに成分はそれぞれこんな感じ。

チョコA…カカオ、きび砂糖、オレンジピール
チョコB…カカオマス、砂糖、ココアパウダー、ココアバター/乳化剤、香料、(一部に乳成分・大豆を含む)

お酒が常温の状態だと、チョコAがおいしい。
シンプルな材料で乳化剤が入っていないのでザクザクした食感、
オレンジピールのほろ苦さと古酒の酸が爽やかに合って心地いい。
チョコBはしっかり固まっているので、常温のお酒とは絡みづらい。
口の温度でしっかり溶かした上でお酒を含むといいのかな。

そのお酒をちょっとお燗つけてチョコBを合わせると、
口のなかでねっとりと絡まりあって、これはいい感じ。
チョコAとは、お酒の香ばしさでカカオの香りがさらに引き立ってこれまたいい。

食後にひと欠片と半合。
ささやかなようで、けっこう満足燗…感あります。


このイタリアのチョコはオレンジビール入り以外に、岩塩入り、シナモン入りなどあり、
とどろき酒店、薬院stand!店頭で販売中です!

杜の蔵のお酒



スタッフ研修で山口に行ってきました! 「三蔵目 貴(たか)編」by 水上

阿武の鶴酒造から日本海沿いを走らせ次に向かうのは山口県宇部市に蔵を構える「永山本家酒造場」。日本海側から瀬戸内海側へと山口県を縦に横断です。漁師町から徐々に山間の農村エリアへ、山口県の広さを感じさせられました。山間を走ってると大正、昭和感を漂わすレトロな建物が目に入ります。その建物こそ貴(たか)を醸す永山本家酒造場なんです。昔の役場を改装し事務所&物販ブースを設けてるスペースがなんともお洒落!タピオカが出てきそうなカフェに来てるみたい。

2階はホールになっており木桶で出来たテーブルなど所々に酒蔵らしさが散りばめられ、これまたお洒落ー!
そして柔らかなオーラを醸し出しながら永山貴博さん(通称ゴリさん)登場。

明治21年創業の永山本家酒造場。現在の代表取締役兼杜氏の貴さんになり、当時当たり前のように出回ってた活性炭濾過のお酒に疑問を持たれてました。そしてこれからの「貴」の方向性を決めるきっかけとなったのは2007年にフランスの自然派ワイナリーへ訪問したのが大きいと貴さんはいいます。自然派ワインの「造り手の顔が見える」ワイン造り、ぶどうが育った畑が感じられ人間臭さが伝わるワインに感銘を受けたそう。今、貴さんは農業法人を立ち上げて周りの農家と共に山田錦造りを行っています。地元の田んぼて育てたお米を地元の酒蔵が醸す。本来の日本酒が持つ姿を形にしようと挑戦しています。

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スタッフ研修で山口に行ってきました!「二蔵目 阿武の鶴編」

澄川酒造場に続いて訪れたのはレトロな街並みの中に佇む阿武の鶴(あぶのつる)酒造

蔵の裏手にあるという駐車場を探してしばし彷徨っていた僕らを案内してくれたは、笑顔が素敵な爽やかなお兄さんといった感じの三好隆太郎さん、1983年から33年間閉鎖していた蔵を復活させた阿武の鶴酒造の6代目です。

前職で内装の設計をしていたという三好さんは「もう少し人に近い仕事がしたい」ということで、ハローワークで千葉の酒作りの仕事を見つけそこから酒造りのキャリアが始まったそうです。個人的にとても意外だったんですが、酒造りの仕事はハローワークなどで普通に募集があったそうで、そこから埼玉、岐阜、青森と様々な土地の酒蔵で酒造りを経験して山口に戻ってきたとのこと。

初めは「ここで出来るとは全然思ってませんでした」と語る三好さんは、山口に帰ってきて県内の酒造りの先輩方と話していくうちにジワジワと「実家の酒蔵を復活させたい!」という気持ちが盛り上がってきたそう。

実家の蔵に戻ってきて最初の仕事は、巨大な物置と化していた蔵を少しずつ片付けながら”メイキングザロード”していくことだったそうで、現在は先代からの設備でまだ利用できるものは再利用し、新しく導入した冷蔵庫、先輩方から譲り受けたという設備でお酒を醸しています。

三好さんのお酒のコンセプトは「そばにあったら嬉しいお酒」。

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